プログラミングを学ぶべき理由
そもそも、なぜプログラミングなの?
小学生がプログラミングを学ぶべき理由について、プレスタ代表の溝口がいろいろな角度から考察しました。
参考にしていただければ幸いです。
子どもは勉強する理由がわからない
いつの時代も子どもは勉強が嫌い
昔も今も、親が子どもにかける言葉で一番多いのは「勉強しなさい!」ではないでしょうか?
よくある悩みベスト3
- 学校から帰ってすぐに宿題をしない。あるいは宿題以外の勉強をしない
- 自分で新聞や本を読んだり調べたりしない
- 放っておいたらいつまでもゲームや動画ばかり見ている
「うちの子、このままで大丈夫かしら?」と不安を感じるのは、いつの時代も共通の親の悩みだと思います。
でも子どもにしてみれば、勉強する理由がわからないからやる気になれないのです。
なぜ子どもは勉強しないといけないの?
子どもに聞かれて答えに困った経験があるかもしれません。
難しい問題ですが、私ならこう答えます。
それは、大人になったときに自立して生きる力を身につけるため。
言い換えるなら「誰かに従うのではなく、自分の意志でやりたいことを自由にできる人生を送るため」です。
だからこそ、親は子どもに勉強してほしいと強く願うのです。
みずから学ぶ子に変身させる特効薬とは
親に言われてやるのではなく、自分からいろんなものに興味を持って勉強してほしい。
そうなるために、親はどうすればいいのでしょう?
その答えは
子どもが好きなことをトコトンやらせる!
自分で試行錯誤を繰り返すことで得られる学びがあり、思考力や集中力が自然と身に付きます。
「できることが増えるって、うれしい!」
「学ぶことは楽しい!」
自分でそう思えるようになればしめたもの。親がうるさく言わなくても、みずから学びを求めることでしょう。
応援すべきは「創造性がある好きなこと」
ただし「好きなこと」には二種類あるので気を付けて区別してください。
一つは消費するだけのもの。もう一つは創造性があるものです。
例えばケーキが好きだからといって、ケーキを買ってきて食べるだけでは何も残りません。これは消費するだけのものです。
しかし、レシピを見ながら自分でケーキを作ればその腕前が身につきますし、自分なりのアレンジを試したりもできます。これが創造性があるものです。
もうひとつ例を挙げると、ゲーム遊びは時間を消費するもので、プログラミングはアイディアを創造するものです。
違いがおわかりいただけましたか?
子どものやる気に火が付く「創造性がある好きなこと」を見つけて応援してあげましょう。
「子どもが好きなことがわからないんです…」
とはいっても「子どもが何に興味があるのかよくわからない」という親御さんがいらっしゃるかもしれません。
しかし、難しく考えなくて大丈夫です。
例えばお子さんが
- 積み木やブロックなどの造形遊びが好き
- 電車、自動車、飛行機、ロケットなどの動くものが好き
- アニメや特撮ものに登場する秘密道具や巨大ロボが好き
ならば、ロボット工作にハマる可能性が高いです。
ゲームが好きならば、ゲーム感覚で学べるプログラミングに興味を持ちやすいと思います。
好きなことでかしこくなろう
上の写真のような「ロボットプログラミング」がいま人気です。
その理由は、論理的思考力を養う教材として優れているのはもちろんですが、子どもが「勉強している」という意識をもたずに自分から取り組めるのが大きなメリットです。
とはいえ、ロボットプログラミングに興味を示すかどうかは、やってみないとわかりません。
とにかく一度、体験させてみましょう!
「うちの子には難しいかも」と先回りせずに、チャレンジさせてみませんか。
眠っていた才能が目覚めるかもしれません。
ロボットプログラミングはまだ新しい習い事のため、親世代は未経験だと思います。
よくわからないからと敬遠するのではなく、子どもと一緒に勉強するつもりで体験されてはいかがでしょうか。
親が知っておくべき20年後の未来予測
AIは敵か、味方か?
20年後、今ある仕事の半分はなくなる。
こんな話を聞いたことがあるかもしれません。
人工知能(AI)の発達で、これまで人間が担っていた仕事がコンピュータやロボットに置き換わろうとしています。
すでに目に見えている例でいえば、電子書籍や音楽聴き放題(サブスクリプション)のサービス登場で、町の書店やレコード店が姿を消しました。
AIがあなた好みの商品を提案してくれますから、ショップの店員や営業マンの仕事は大幅に減ります。
自動運転のクルマが普及すれば、タクシー運転手やトラック運転手という職業が希少になるかもしれません。
自動翻訳の精度が向上すれば、翻訳家の出番はなくなりそうです。
そこを捉えて「AIに仕事を奪われる」と危機感をあおる論調が目につきますが、私はそうではないと考えています。
AIと仲良く生きる時代へ
AIは超人的な働き者で、与えられた仕事をきっちりこなす道具です。
いかにAIがすごいと言っても、あくまで人間の仕事をサポートする「道具」にすぎません。
その「道具」が面倒な仕事をテキパキと片付けてくれるので、人間はもっと複雑で創造的な仕事に専念できます。これは大きなメリットです。
AIと仲良しになれる人はそのメリットを享受できますが、AIを拒絶する人は仕事を失うか、面倒な仕事を安い報酬でやり続けることになるでしょう。
では、AIと仲良しになる(=AIを使いこなす)にはどうすればいいのでしょうか?
それにはAI(=コンピュータ)が使う言葉や考え方を知る必要があります。
そう。それがプログラミングです!
いまプログラミングを学ぶことは、20年後を生き抜く力を身につけることになるのです。
いま、プログラミングが注目される理由
20年後の未来を見据えて、子ども向けのプログラミング教育が世界的に注目を集めています。
しかしなぜ、プログラミングなのでしょうか?
それは、プログラミングを学ぶことで次のような能力が鍛えられるからです。
ロジカルシンキング(論理的思考力)
ロジカルシンキング(論理的思考力)とは、物事を筋道立てて構成し、理路整然と考えられる力です。
例えば、池上彰さんのように「難しい物事を、やさしい内容に分解し、わかりやすい順番で説明できる力」といえばイメージしやすいでしょうか。
プログラミングをするには、まず「何をしたいのか」を決めて、それを完成させるためにどんな処理がいくつ必要で、それらをどの順番で実行するかを考えなければなりません。
これはまさに論理的思考力が試され、プログラミングを何度も訓練することで鍛えられるのです。
クリティカルシンキング(客観的な分析力)
クリティカルシンキングは批判的思考と訳されます。
その意味は、与えられた情報を鵜呑みにせず、常に疑いの目を持ち、客観的事実を洗い出して分析する力です。
例えば、家電量販店で「新製品のパソコンがどこよりも安いですよ」と店員に声を掛けられたとして、何の疑いもなくそのパソコンを買うでしょうか?
そのパソコンは本当に新製品なのか、本当にどこよりも安いのかという疑問を持って、パンフレットを見たり他店の価格を調べたりすることでしょう。
それよりなにより、自分は今パソコンが必要なのか、という前提も疑問ですよね。しっかり考えなければ無駄な買い物をしてしまいます。
以上は簡単な例ですが、クリティカルシンキングは社会生活を送るうえで当然持っておくべき思考力です。
プログラムがうまく動かないとき、このやり方で正しいはずだという思い込みを排除して、何が間違っているのかを冷静に分析し、修正する必要があります。
この思考の繰り返しでクリティカルシンキングが鍛えられ、問題解決能力が養われます。
ラテラルシンキング(自由な発想力)
ラテラルシンキングは水平思考という意味で、既成概念や固定観念を取り払い、自由な発想を促す思考法です。
例えば、2個のりんごを3人に分けるにはどうすればよいでしょうか?
それぞれ3等分して2個ずつ配るという方法が一般的な答えですが、もっと発想を広げれば、ジュースにして3杯に分けるという方法も考えられます。
固体のまま配らなければならないと思い込んでいたら、ジュースにするという発想は出てきません。
決まった答えがない問いに、答えをいくつも考え出せる柔軟な発想力を磨きます。
プログラミングは作り手の発想力でいくらでも発展させることができ、失敗しても何度でもやり直しがきくので、思いついたアイディアを次々に試すのにうってつけです。
プログラミングは未来に直結した学び
このように、プログラミングはさまざまな思考力を同時に発達させることができるので、非常に効率の良い教材といえます。
もちろん、プログラミング以外でも思考力を鍛える方法があると思います。
しかし、プログラミングほど誰もが興味を持ちやすく、未来の超情報化社会に直結した学びは他に見当たりません。
プログラミング必修化に期待してはいけない
小学校のプログラミング必修化で安心ですか?
ここまで述べてきたように、小学生のうちにプログラミングを学ぶことは、論理的思考力などを発達させるのにとても効果的であることがわかってきました。
また、IT人材不足が将来さらに深刻化するという予測を受けて、文部科学省の学習指導要領にプログラミングの必修化が盛り込まれました。
2020年度からすべての小学校でプログラミング教育が始まったのです。
「小学校でプログラミングを学べるなら、わざわざ外で習わせる必要はないわね。」
もしそう思われたのなら、この続きを読んでください。
小学校の授業時間が足りない!
プログラミング教育が必修化されるといっても、プログラミングという教科が増えるわけではありません。
算数などの既存教科の時間を使って学ぶことになっていますが、時間数の少なさは否めません。
さらに問題に輪をかけるのが、英語の必修化です。
全体の授業時間は増えないのに、教える内容が大幅に増えるのです。
一体どうやりくりすればいいのか、小学校の現場はてんてこまいのようです。
先生たちはプログラミングの教え方を知らない
さらにいえば、現在の教員はプログラミングというものを学んでいません。
今までなかったのですから、それでよかったのです。
個人的に勉強した先生がいるかもしれませんが、教え方はこれから手探りで編み出すことになるでしょう。
英語であれば子ども向けの教材がすでにたくさんありますが、プログラミングの教材は書店を探してもまだ少ない状況です。
学校や先生によって、教える量やレベルに相当なバラつきが出ることが懸念されます。
授業不足を補う課外活動の必要性
このような状況を見越してか、文部科学省が発行している「小学校プログラミング教育の手引」には、教育課程外の活動として「学校外でのプログラミングの学習機会」について言及しています。
このなかで、
学校の教育課程に位置付くものではありませんが、地域や企業・団体等においてこれらの学習機会が豊富に用意され、児童の興味・関心等に応じて提供されることが期待されるところであり、各学校においても、児童の興味・関心等を踏まえ、こうした学習機会について適切に紹介するなど、相互の連携・協力を強化することが望まれます。
小学校プログラミング教育の手引(第二版)- 23ページ
と記載されており、学校内だけに留まらないプログラミング教育の機会を求めています。
IT教育の格差が広がっている
一部の私立小学校や公立の先進校では、数年前からプログラミング教育を導入して一定の成果を上げています。
つまり、先進校とそれ以外の一般校の格差がすでについているということです。
お子さんが通っている小学校は、プログラミング教育を推進していますか?
オンライン授業はスムーズに行えていますか?
「まわりがまだやっていないから、しなくても大丈夫。」ではありません。
子どもたちは将来、それこそ世界を相手に生きていくのですから、自宅から半径数キロの視点で考えていては判断を誤ります。
アンテナを高く立てて、お子さんに本当に必要な教育は何なのか、よく見極めてください。
しくみを知らなくても使えればいい?
子ども向けのプログラミング教育は、職業プログラマーを育成するものではありません。
ロジカルシンキング(論理的思考力)等を鍛える手段としてプログラミングを利用するのです。
それではなぜ、小学生のうちにプログラミングを学ぶべきなのでしょうか?
魔法の世界に生まれた子どもたち
今の子どもたちは、生まれたときからスマートフォンやインターネットがある環境で育っています。
幼児期に、絵本代わりに動画サイトを見たり、スマホアプリで遊んだりするのは珍しいことではありません。
ご家庭によっては、
- 床の上をお掃除ロボットが動き回っている
- 声でテレビなどの家電製品を操作している
- 帰宅途中にスマホで自宅のエアコンを付けられる
- お留守番のペットの様子を外出先からスマホで見られる
- aiboのようなペットロボットを飼っている
といった環境がすでにあるかもしれませんね。
親世代の子ども時代と比べたら、これはもう魔法の世界と言っていいのではないかと思います。
子どもたちはこのような現実をどう理解しているのか、とても気になるところです。
しくみを知らなくても困らない?
デジタルネイティブの現代の子どもたちは、スマートフォンやタブレット端末といったIT機器をいとも簡単に使いこなします。
しかし、身の回りの便利なものが、どういうしくみで動いているのか意識することはありません。
魔法じゃないことはわかっていても、きちんと説明するのは大人でも難しいと思います。
「しくみなんか知らなくても、使えればいい。」
そういう考え方もあるでしょう。
ところが小学校の勉強は、簡単にいうと、世の中のしくみを学ぶためにあります。
- 国語は文字や文章のしくみ。
- 算数は数や計算のしくみ。
- 理科は自然界のしくみ。
- 社会は地域や産業のしくみ。
どれも欠かすことのできない基礎知識ですよね。
「しくみ=原理原則」あるいは「しくみ=普遍的な常識」と言っていいでしょう。
しくみを学ぶことがいかに大事か、おわかりいただけると思います。
しくみの理解に役立つプログラミング
プログラミングを学ぶことは、しくみを理解するのに役立ちます。
なぜなら、現代のあらゆるものがプログラムで動いているからです。
ここで突然ですが、駅の自動改札機を思い浮かべてください。
かつては駅員さんが改札口に立って、紙のきっぷを目で見てチェックしていましたね(親世代もその時代を知らないかもしれませんが)。
それが磁気のきっぷを通す機械になり、いまではICカードをタッチするのが主流になりました。
子どもと電車に乗るときに「自動改札機はどんなときに扉が開いたり閉じたりするのかな?」と聞いてみてください。
子どもなりにいろいろ考えて答えてくれるはずです。
なかなか言葉にできなかったり、無茶苦茶な答えが飛び出すかもしれませんが、叱らずに聞いてあげましょう。
正解を教えて覚えさせるのではなく、自分の頭で考えさせることが大事です。
プログラミングを学んでいれば、具体的な処理手順を想像しながら考えるようになるでしょう。
小学生の発明家がどんどん生まれる時代へ
「子どもだからできない」というのはもはや時代遅れ
スポーツの世界では、小中学生のジュニア世代が世界を相手に戦っているのは珍しいことではありません。
幼少のころから英才教育を受けた特別な子どもなのかもしれませんが、並みの大人では歯が立たない、ずば抜けた才能を開花させていますよね。
スポーツ以外の世界ではどうでしょう?
ものづくりとか発明というと、以前はそれなりの場所や設備が必要でしたし、それに見合う資金も求められました。
しかし現在は、パソコンとインターネット、プログラミング能力があれば誰でもアイディアをカタチにできるようになりました。
もちろんそれが小学生であってもです。
怖いもの知らずの小学生の突破力
子どもは大人のように先の先を読んで行動することが得意ではありません。
しかし、そのおかげで、物怖じせずに大胆なチャレンジができる突破力があります。
好奇心旺盛な小学生のうちにプログラミングを学び、もののしくみに興味を持って考えるクセをつけることは、一生の財産になります。
これは、親から子への最高のプレゼントです。
これからはもしかすると、小中学生の発明家がどんどん登場する時代になるのではないかと、私はひそかに期待しています。
時代遅れの『常識』に染まる前に動き出そう
ちなみに、高校生、大学生、社会人になってからプログラミングを学ぶことは、もちろんできます。
しかしながら、それまでに身に付いた(時代遅れの)常識や、間違えるのが恥ずかしいという意識が邪魔をして、自由な発想を妨げられがちです。
また、年齢が上がるにつれて、プログラミングを学ぶ目的が発想力を養うためではなく、職業的なプログラミング能力を鍛える方に重点が移ります。
そのうえ、プログラミング以外にやらなければならない勉強、部活動、仕事が増えて、十分な学習時間の確保が難しくなります。
このような理由から、プログラミングで思考力・発想力を鍛えるなら、なんといっても小学生時代が効果的なのです。
やってみなければ始まらない
「プログラミングって、なんだかむずかしそう。」
そんなイメージをお持ちかもしれませんが、一度さわってみれば、
「思ってたより簡単!」
「プログラミングって楽しい!」
と気付くかもしれません。
まずはどんなものか、体験だけでもしてみてはいかがでしょうか。